2005-09-01

パンジーだよりNo.57

特集  韓国の人たちとの交流

 夏の始めに、パンジーでは3つのグループに分かれて旅行に行きました。ディズニーランド、万博&自然の中でゆったりコース、そして「韓国」です。
 韓国はパンジー旅行初めての海外旅行です。旅行会社からは「韓国はバリアフリーが遅れている」との情報がある中で、どういう旅になるのだろう、という不安をよそに、車いすの人も含めて、みんな元気に旅立っていきました。
 韓国から帰ってきた人たちの第一声は「ごはんがおいしかったわ!」。目当ての物が買えたとおみやげを見せてくれる人もいました。支援者は「(車いすの当事者と)毎晩飲みに行ってきた。行く? と聞いたら行くと言うんや。階段全部抱えて昇り降りした」と得意そう。当事者も支援者も新しいことにチャレンジし、自信につながっていく。パンジーのグループホームが毎年1件〜2件の割合で増えてきたのも、彼等のこういった姿勢が板についているからだとつくづく思いました。
 同時に「もっと韓国の文化に触れたかった」と不完全燃焼だった人もいました。パンジーの旅行では、「人との出会い」がテーマの一つになっています。韓国に行ったことで文化や人と触れあいたい、もっと知り合いたいという思いが強くなったのだと思います。
 そんな夏の終わりに、パンジーに思いがけないお客さんが訪れました。韓国で障害者の支援をしている人たちが見学に来られたのです。かえる会を見学したり、意見交流会をしたり。いろんな発見や楽しい体験がありました。韓国の人たちとの交流について、特集で紹介します。




今度は韓国の当事者に会いたい

韓国から支援者が見学に来る! かえる会への見学者は珍しくないことですが、外国のお客さんとなれば、みんな緊張ぎみです。「意見交換の時間はどのぐらい?」「新職員の面接に韓国の人に入ってもらうか?」等話し合っているとき、韓国の人たちが「アンニョンハセヨ」と入ってきました。こちらも「アンニョンハセヨ」。
まず、20分後に始まる当事者の職員面接に、韓国の人たちが入るかを話し合いました。「やりにくいから出てもらおう」「かえる会の活動として見てほしい」等々、まとまりそうもありません。「日本語わからへんから、おってもいいんちゃう?」の意見には「通訳がいてる!」とつっこみが入りました。韓国の人たちの意見を聞くと「見せてください」との答え。部屋の片隅で静かにする約束で、同席することになりました。
百人を超える職員を面接してきたかえる会の力を見てもらいたい。面接の質問に力が入ります。「○○さんにはちょっと難しいだろうけど、入所施設で事件が起きてること知ってますか?」「入所施設がどんなところか知ってますか?」「当事者に腹が立った時、自分を噛みしめられますか? 手を出したらあかん!」。等、矢継ぎ早に質問が続きました。言葉は通じなくても、意気込みは伝わったと思います。
休憩の後、自己紹介やかえる会の説明等、約1時間話し合いました。韓国の人たちから、次のような鋭い質問もありました。「議長、副議長を決めるのに条件はありますか?」「職員を辞めさせる権利はあるの?」「職員の人事権について問題は起こりませんか?」「職員の給料、人事についても考えているの?」等々。かえる会メンバーも少したじたじでした。
最後に、「韓国で、かえる会のような会はありますか?」と聞くと、「当事者が話し合う会はありますが、職員の面接はしていません」という答えでした。
「韓国の当事者も職員に面接できたらいい。最初は緊張するけど、気づかないうちに力がついて職員にはっきり言えるようになるから」が、かえる会メンバーの後日の感想です。 (山田)




「すてきな恋をするために」

 韓国の人たちの一番の目的は当事者へのセクシャリティ支援だという。8月11日「ハートブレイク思春期研究所」主催のワークショップ「すてきな恋をするために」が行われた。会場は銭湯を改装した「自立生活支援センターわくわく」だ。参加者は、主にパンジーの当事者と支援者、韓国の人たち。「何が始まるんだろう? 楽しみ!」という表情の当事者たち。軽快なギターの音と歌でワークショップが始まった。
 最初に「男性と女性の体の大切さの話」がある。フエルトで作られた模型を前に恥ずかしそうな当事者や、興味津々な人等さまざまだ。
 次に、話題は恋愛のことへ。昨年9月に結婚したIさんから「仲よくするコツ」が話されて場が和んだ。
 次に「いいな」と思う人にハートのクッションを渡すことになった。SさんがGさんにハートを渡しに行き、手をつないで歩くと、みんなから歓声があがった。2人とも嬉しそうだった。Gさんに聞くと「お母さんには内緒にしとく」とのこと。ちょっと頼もしい。
 韓国の女性めがけてハートを渡しに行ったNさん。さすが! デートでの会話のでは「星がきれいだね」「結婚しよう」等、見ている人もドキドキワクワク。早く順番が来ないかなとうずうずしている人たちがいて面白かった。
 参加者した当事者は「手をつないでみたい」「デートしてみたい」「ハートを渡せてよかった」と楽しそうだった。相手に気持ちを伝えることや伝えてもらうこと、触れあうことの心地よさをそれぞれに感じたことと思う。その感覚を素直に感じ大切にしてほしい。すてきな恋をするために。そして、私たちは、その過程を支援していきたい。   (にしお)




韓国の人たちとの意見交換会

 交流最終日は、パンジーの職員、ザ☆ハートの当事者との意見交換会が、河東田博さんの司会で進められました。三日間に伝えきれなかった日本の障害者福祉システムや、パンジーの理念とそれを実現するための組織、日頃の活動やそれぞれの部門の課題を話しました。
 韓国の人たちのパンジーの印象や感想は・・
★自立生活している当事者が、生活保護と年金で生活していると聞いた。韓国の状況とは違い、様々な活動があり、楽しそうに見えた。
★最初、当事者も支援者も性について無関心なのかと思った。後に、国民性のちがいなのだとわかった。韓国では仕事以外の社会活動がほとんどない。
★同じ目標に向かって活動している人が日本にもいるんだとわかってうれしい。
★当事者が尊重されていることに衝撃を受けた。当事者活動を過小評価していたが当事者が中心になっている場面を見て反省した。当事者が力を持っている事を改めて確認できた。
★今回はスタート。ピープルファースト大会にも参加したい。今度はぜひ韓国へ!

 ザ☆ハートの生田さんは、「韓国でもピープルファーストをやってもらえたらいい。仲間を広げたい。」、梅原さんは「パンジーでやっていることが、これでいいと思っているけど、わからんこともある。もっと勉強したい」と話しました。
この交流をきっかけとして、韓国でもピープルファースト運動や当事者主体の活動が広まっていけば本当にうれしいと思います。梅原さんの意見にもあるように、パンジーはこれでいいわけではなく、もっと当事者の生活が良くなる支援をしなければと改めて考えることができた交流でした。韓国の皆さん、お互い頑張りましょう。また会える日を楽しみにしています!
(たき)




韓国の支援者と交流して

当事者の感想です。

宮田「韓国でも施設があると聞いた。解体したらいい。ピアカンのことを詳しく聞かれた。今度は当事者も来て、一緒にピアカンができたらいいです」
生田「韓国に帰ったらピープルファーストやりたいと言ってた。メンバーはようけおるって。福祉の制度がまだまだって言ってたけど、ピープルファースト作って当事者が力つけてほしい」
梅原「韓国は職員ばっかり動いてるからまだまだやなと思った。当事者がきてほしかった。こっちの話ばかりで、むこうの話ももっと聞けばよかった」
田邊「韓国の支援者の人は優しかった。吹奏楽や、ギターの話をした」

「すてきな恋をしよう!」に参加して
「にぎやかだった。手をつないだAさんは今日もお茶をいれてくれてお嫁さんみたい。生田さんと中多さんみたいに結婚できたらいいな。その練習やと思った。Aさんの手あったかかった。めったに行かれへん世界一周の新婚旅行に行きたい」
「よかった。結婚したい。デートは買い物がいい。手をつないでうれしかった。Sさんも喜んでた。お母さんには内緒にしといた」
「女の人と付き合ってみたい。デートは公園に行きたい。好きなタイプはお金持ちで細い人」
「私もしたい(手をつなぎたい)なと思った。デートはカラオケで石原裕次郎とかデュエットしたい。今、好きな人いる。ハートを渡したい。韓国の女の人が一緒にいてくれたのがうれしかった。道で会ったら声かけるねと言ってくれた」
「AさんとBさんがとても仲がよかった。私もちょっとはしてみたいなと思った。ハートを渡すやつが一番よかった。男の人に渡した。とても心やさしい人。また参加したい」
「ハートを4つもらった。お兄さんみたいに、ええ人がおれば、結婚したいなと思った。また参加したい」




パンジー旅行inディズニーランド&愛知万博&韓国!
 
 
 7月6日(水)〜8日(金)の2泊3日、パンジー旅行に行きました。当事者、職員総勢120名。今年は初めての試みとして、3グループにコースを分けて旅行に行きました。そのうちの一つは、初めての海外旅行、韓国です。パスポートを申請にいったり事前に韓国語の勉強をしたりと、職員、当事者とも旅行にいく前からワクワク、ドキドキでした。
 
 <韓国>総勢22名で、ソウル中心部とその近郊へ行ってきました。
 オシャレをし、韓国で購入したい物を決めてきた当事者たち。空港へ向かう車中からワクワク感と不安感で熱気のあふれる感じでした。韓国では、韓定食と古典舞踊を楽しみ、韓国民俗村や西大門刑務所歴史館で歴史にふれました。夜は夜で繁華街や焼き肉屋で韓国を堪能しました。「せっかく韓国まで来てるねんから、いっぱい楽しまなもったいない!」

<東京>
楽しみにしていたディズニーランドやディズニーリゾートで思う存分楽しみました。
ショーやアトラクション、パレードなど梅雨の合間のためか混雑がなく満喫! 夕方の集合場所には、ミッキーマウスも集合!! 突然のミッキーの登場にみんな驚くやら感動するやら。やってくれますミッキーさん。元気のない当事者もミッキーの顔を見たとたんにこにこ! ミッキーの魅力に参った!

<愛知>
3つの旅行のコースでは一番のんびりしているコース。バスに揺られて白川郷へ。昼食は飛騨牛のしゃぶしゃぶ。五平餅のおやつやソフトクリームなど、たくさん食べた! ホテルでは宴会。ほぼ全員の当事者がカラオケを歌って満足そうでした。郡上踊り体験の後は外から丸見え雄大な露天風呂でのんびりすしました。愛知万博はパビリオンにも車椅子席があって、行列の多いパビリオンにも入ることが出来た! 帰りはきしめん。食べに食べた3日間でした。

(東京)
・ミッキーと握手した。写真を撮れてよかった。夜のパレードがごっついきれいだった。
・スプラッシュマウンテンに乗ったり、乗り物に乗ってとてもよかった。
・来年もまたディズニーランドに行きたい!
・すごくにぎやかでした。来年はもっとにぎやかな旅行にしましょう。

(愛知)
・一生に一回しかない愛知万博、思い出になりました。愛知博で購入したお土産は、いつかレアモノになると思う! 
・旅館では、カラオケ出来て楽しかった。万博が来年もあったらいいのに。
・料理がいっぱい出てよかった。

(初めての海外旅行・韓国)
・買い物で悩んだ。韓国のお金の使い方などを、行く前にもっと練習して行きたかった。
・ビールも大阪と違う。ちょっとうすいけどおいしい。コップでいっぱい飲んだ。最高!
食べ物もおいしかった。辛いスープ急いで食べた。肉柔らかかった。踊り見物−かわいい子が踊っていた。持っていった名刺を渡した。韓国海苔うまい!
 ・景色がよかった。小物入れとかお土産買った。免税店がでかかった。刑務所はちょっと難しかった。言葉の練習が出来て良かった。韓国のタバコもいけた。
・来年も海外に行きたい! グアム、サイパン、ハワイ。オーストラリアもいいな。ニューヨーク、パリなんかも行ってみたい。

(初めての小グループでの旅行はどうでしたか?)
「大勢の方がわいわい出来て楽しい」「グループで行けてよかった。来年も3択がいい。人数が多いとしんどいので嫌やん」「今年はグループだったので、来年は全体の方が楽しいと思う」「グループと全体、1年交代で行ったらどうや!」





人に対する安心感V
中新井 澪子

 8月初旬、創思苑主催の講演会で滝川一廣先生(精神科医)の話を聞いた。先生の著書−「こころ」の本質とは何か−で予習して臨んだので、先生の人間学的な「障害観」をよく理解できた(と思っている)。また、「精神発達のベクトル(※注1)」の2軸を提示していただいたお陰で、私が60数年間で出逢った多くの人達− 大人も子どもも、障害のある人もない人もその境目の人も−が一本の軸のまわりに整理されたようなスッキリ感を感じてうれしかった。そして今「安心感」について書いている私から離れないのは「こころのもつ共同性」である。少し長くなるが先生のことばを次に引用する。

 『こころの共同的構造が認識というレベルで機能すれば、人間はそれぞれの個体のもつ生理学的な感覚知覚機能のままに世界をとらえるのではなく、たえず「意味」や「関係」の相において世界をとらえ直して、それによって個体の認識世界を社会的に他人と共有可能なものとしてゆくというこころのはたらきとなって現れてきます。人間のこころのはたらきは高度の共同性をもっています。精神発達とは、この共同性の獲得のプロセスにほかなりません。 この共同的構造が日常生活のレベルで機能すれば、自分以外の人という意味での「他人」との関係にたえずこころをはたらかせながら精神生活を営むというかたちで現われます。
 (中略)その精神生活で大きな焦点となるものが、 他人との関係のなかで自分は安全なのか、受け容れられているのか、存在そのものを認められているのか、と言う問題です。裏返せば、自分は他人との関係に置いて安全を脅かされまいか、排除されまいか、承認を奪われまいか、といった不安やおそれが焦点となります。なぜ大きな焦点になるのかは、人間とはまわりへの「依存性」を生きる存在だからですね。他人なしでは生きられません。「依存性」を他人から基本的に保証されるかどうか、これは社会的な生存にかかわることです。「安全」と「受容」と「承認」があってはじめて、私たちは安心して世界に身を委ねつつ生きられます。』

 私は「パンジーだより」のこのシリーズで、コミュニケーションの下手な人の中に、それでも何とか伝えようとする人と、なかなか自分の思いや要求を出せない人達がいて、その違いはメンバー達の能力でも訓練の成否でもなく、彼らのもつ「人に対する安心感」の有りようではないかと書いてきた。日常場面でのかかわりも、彼らが自発的に訴えてくる(同じことばのくりかえしや叫び声、手を引っぱることなども)ことには、出来る限り応えてきた。メンバーは自身が出来ることを依頼されている場合も、その気持を汲んで手伝ってきた。また、自ら訴えようとしない人には、出来るだけ側にいて、あなたの役に立ちたいといつも思っていることを何とかして伝えたいといろいろかかわってきた。そして、スタッフとのミーティングでも、私の考えを話してきた。
 困った時や苦しい時に、周りの人に安心して支援のS.O.Sを出せることが自立の第一歩と確信しているものの、私自身の心の「ゆらぎ」はいつもある。特に、メンバーからの要求が思いどおりに通らない時のパニック状況への対応や他のメンバーへの影響を思う時、「もっと適切なかかわりがあったのでは」と考えて寝つけない時もある。また、「依存関係」や「こだわり」がエスカレートするのではとの指摘に、「大丈夫」と答えながらも「本当か?」と自答したりしている。
 こんな状況の私に、今回の出逢いは「安心感」を与えてもらったような気がしている。先生の言葉を借りれば、「こころのもつ共同性」が十分に広まり深まっていない人たちが持つ「共同世界から排される(依存を絶たれる)」のおそれに対し、「依存性」を基本的に保証するのは社会的な生存を支援することなのだ。
 しかし、その一方で先生は、逆に「共同世界に支配され呑み込まれる」おそれについても言及されている。このような被害的なおびえの様子を示すのは、比較的コミュニケーション能力の高いメンバーに見られるように思う。次回に考えてみたい。




滝川一廣さん講演会報告

  2005年7月22日、第一回地域生活支援ミニフォーラム「『こころ』の本質とは何か〜知的障害者の世界〜」を、大正大学人間福祉学科教授の滝川一廣先生をお迎えして開催しました。100名弱の参加があり、熱気あふれる講演会となりました。
私たちは、自閉症や「行動障害」と言われる人たちと関わっています。滝川先生の話で、社会で生きていく上で@まわりの世界をより深くより広く知っていくこと(認識の発達)、Aまわりの世界とより深くより広くかかわってゆくこと(関係の発達)が大切であり、知的障害を持つ人たちは@の軸が苦手であり、自閉症と言われる人たちはAの軸が苦手であること。その困難さや心理を理解し関わることが重要であることなどが分かりました。(詳しくは「『こころ』の本質とは何か−統合失調症・自閉症・不登校のふしぎ」ちくま書房をご参照下さい)
これからは支援者が以前よりも気持ちの余裕を持って関われるようにしたいと思います。
さて、第2回目として12月1日にニキリンコさんの『俺ルール、自閉は急に止まれない』を予定しています。ぜひご参加ください。  (久保)




ポジティブな視点でのとらえ直しを
〜韓国の人たちとの交流で見えてきたもの〜

林淑美

 夏休みに入る寸前、韓国から見学者が訪れた。本来は、ハートブレイクの人たちがパンジーで行う「すてきな恋をするために」のワークショップを見学が目的であった。その機会に立教大学の河東田先生の進めもあり、パンジーの当事者中心の活動を見学したいと申し入れがあった。
 詳細は、担当した各職員の報告に譲るが、かえる会の職員面接に、衝撃を受けたようだ。そして、職員面接や、法人の役員に当事者がなっていることなど、法人の運営に当事者が深く関わっていることに驚きを隠せないようであった。そして、当事者中心の活動を支援している職員の質を高く評価してくれた。当事者中心の施設にすること。そして、それを支援できる職員を育てることを法人の理念としてきた私たちにとっては、とてもうれしいことであった。
しかし、当事者中心の活動は、当事者の会を作ったらできるものではない。日々の活動や生活の場等で、「自分の思いを伝えても大丈夫。怒られることはない、支援してもらえるのだ」という安心できる環境や、様々な活動を通して地域の人たちの関わりなどの相互作用の中で、培われていくものだと思う。
 そして、3日目の韓国の人と当事者・職員のリーダーが参加した「意見交換会」の席でのことである。ぜひ、韓国でも当事者中心の活動を作ってゆきたい。そのために、まずは、パンジーの人たちを韓国に招待したい。当事者との交流を実現したい。そして、来年のピープルファースト大会に韓国の当事者を参加させたい」等の発言が続いた。そんな中、意見を求められた当事者リーダーが、「僕は、パンジーは、まだまだ変えなあかんと思うな」と発言した。その言葉に、私は、不意をつかれた気がして、おもむろに体勢をたてなおした。
 この3日間、私は、少し有頂天になっていたのかもしれない。パンジーでは、職員が褒められることは、とても希なことである。当事者中心の活動を支援しようと決めてから、意識して気持ちを切り変えないと「まだだ。まだだ。」「どうしたらいいんだろう。」という焦燥感に襲われることがある。そんな日常の中で、疲れてもいたし韓国の人の国民性もあるのだろうが、ストレートに褒められたのが、素直にうれしかったのだ。
 気を取り直してとらえ直しをするため、私の頭は急ピッチでぐるぐるまわり始めた。そりゃそうだ。パーフェクトなんてありえない。
変えなければならない点がたくさんあるのは、私にもわかっている。
現状は、実現途上なのだ。そして、その現状をどうとらえるかが、当事者や保護者や職員という立場によって少しずつ違うのだと思う。そして、「それにしても、こういう場に当事者が参加していて、様々な立場からの意見が出る。これがパンジーの良いところだ。当事者がいて良かったー!」と思った。こういう、ポジティブな視点でのとらえ直しを「リフレーミング」というそうだ。最近は、意識してそれを心がけている。
 最後に、たった3日間の交流が、「韓国への招待」につながった韓国の人たちの決断と行動のパワーを見習いたいと思った。そして、やはり、人とのつながりの中で、私たちは成長していくのだと思う。
そのつながりを、私は、当事者と一緒に作っていきたいと、改めて思う機会になった。そして、この機会を作って下さった河東田さんに感謝したい。




「障害者自立支援法」の行方と私たちの立場

社会福祉法人創思苑理事 楠敏雄

 皆さんもすでにご承知のように、今年2月に国会に上程された「障害者自立支援法(案)」が8月8日に小泉首相が衆議院を解散したために廃案となった。廃案の直接の理由は言うまでもなく、「郵政民営化法案」をめぐる混乱だったが、この矛盾だらけの法案の審議をここまで引き延ばし、結果として廃案まで追い込んだのはなんと言っても、私たち障害者運動の力によるところが大であると言ってよい。
 ところで、この自立支援法は今国会では廃案になったとはいえ、厚生労働省はこの法律の制定を断念しておらず、衆議院選でよほど大きな変化がない限り、この秋の臨時国会に再提出されることは必至と思われる。現に先日の記者会見で尾辻厚生労動大臣は「この法律は最高のものだ。何の修正も加えずに再提出する」 と言い切っているのである。
 しかしながら、実際のところはこの法案は全くの「付け焼き刃」的なものであり、このことを一番実感しているのは他ならず厚生労働省のお役人たちであるはずである。現に衆議院での法案は通過の際には与党自らが、法案の根幹にかかわる十一項目の付帯決議を提出し、厚生労働省もすんなりとそれを認めているのだから・・・。
 もっとも、付帯決議の内容そのものはどれをとっても明確さも具体性もない項目ばかりで、こんなもので障害者の不安や怒りを沈静化させることなどできるはずもない。たとえば私たちが特に強く批判した所得保障については、「就労支援も含めて所得保障については3年以内に結論をだす」との表現にとどまっている。また、審査会についても「専門性を持つ障害者の参加」や「知事への不服申し立て」などを掲げ、自ら審査会の不十分さを認めざるを得なかったのである。
 さらに移動やコミュニケーションの支援については、「これまでのサービス水準の維持」を掲げており、自立支援医療についても、「月ごとの上限額の設定の検討」を掲げているが、いずれも具体策は何ら提示されていない。
 今後、私たちとしては、問題点が何ら解消されていないこの法案はどうしても認めるわけにはいかず、各地域や全国規模の行動を継続することを提起している。また、私たちの側からの自立支援のしくみや内容についても早急にプロジェクトチームを立ち上げ、新たな提案を積極的に行なって行く必要がある。
posted by パンジー at 20:49 | パンジーだより