2000-10-21

支援することの意味

 パンジーは、知的障害者が「これが自分の生活だ!」と誇りを持つ生き方ができるように支援したいと思ってきた。そうした時、職員に要求されるのは、障害の理解と社会生活を営む上での生き難さへの支援と当事者のエンパワメントへの支援であると思う。

障害の理解と生き難さへの支援

 しかし、パンジーの開所当初、職員は当事者の障害や個性の多様性に対応できず、よく混乱した。それは、「あるがままに受け入れる」と「見せかけのやさしさ」の違い、そして、「あるがままに受け入れる」と「何もしなくていいこと」の違いの混乱に思えた。この違いを言語化しない限り、職員に伝わらない。

 迷った末に、東大阪市療育センターの施設長であった中新井さんに現場に入ってもらい、気づいたことを言語化することをお願いする。その後、1週間に1日、職員は中新井さんと共に当事者に関わり、ミーティングを持つことを続けている。そして、作業室に入ることができなかった人が作業ができるようになり、日常の行動も落ち着いてきた。それとともに、当事者の自立に向けて一つの要となる保護者の安心感を得ることができるようになった。

反面、職員は、施設という限られた空間における指導に自らのアイデンティティーをみつけたり、指導する、指導される関係の固定化にともすると陥りやすい立場にいることを、十分自覚しなければならない。

当事者のエンパワメントへの支援

 パンジーがオープンした年は、カナダで開催されたピープルファースト世界大会(知的障害をもつ当事者の世界大会)に初めて参加した年である。その後、何度かカリフォルニアに研修に行く中で、ピープルファースト運動の
理念をどう当事者の活動としていくのか、試行錯誤を重ねてきた。その間、「元気のでる話」や、当事者の講演、サングループ事件をテーマにした「たちあがろう」等を、当事者の活動として作り出してきた。(後述)これらの活動は「自分に自信を持つことと、仲間どうし支えあうこと」をめざしたものである。

また、中新井さんに現場に入ってもらい始めたのと同じ時期に、身体障害者をピア・カウンセラーとして、ピア・カウンセリングを始めている。それは、知的障害者の自立にいたる過程について、障害者解放運動を担ってきた障害者や共生社会をめざす学者である理事、福祉に携わる専門家、ピア・カウンセラーの身体障害者、障害児・者の親が、それぞれの立場からビジョンを語った時期でもあった。立場が違えば、当然意見も違う。そういう状況で、現場を担う職員は、時には手厳しい指摘を受けて感情を揺さぶられながらも、選択し実践してきたのだと思う。

 そして、職員の支援についての思いは、次のような言葉で表される。
「いろんな考えあるけど、とにかく、これ、やってみよ。あかん時は、みんなで考えよ。できんかったことを、当事者の障害や親のせいにだけはせんとこ。みんなで、助けあおうや。」

 振り返ってみると、その時々に必要性を感じて始めた事が、今、一本の線としてつながってきている。

林 淑美
      (『“自己実現を展く環境”を創る』より転載)
posted by パンジー at 17:40 | 理念